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1か月予報からの「予測」考

先日、気象庁より「1か月予報」が公表されました。これによると、この先1ヶ月の気温は例年より高くなりそうです。東京は今朝も肌寒いのですが、先行き気温が高い確率は70%以上の確率とのことで、予報の自信のほどが窺えます。

【1か月予報】

http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/longfcst/1month/

 

もっとも、気温は高めですが、例年より雨が多く日照時間も少なめのようです。ジメジメと蒸す日が連想され、あまりテンションは上がりません…

 

気象予報はおそらく予報・予測を扱う分野の中では、もっとも成功していると言えます。同じ自然科学でも地震予知はまだまだ実用に耐えません。社会科学に目を向けると、政治の予測は難しく、経済・景気の予測については外す確率の方が高いように思います。証券会社の株価の予想は「チンパンジーのダーツ投げ以下」、日銀の展望レポートは「願望レポート」、こんな皮肉まであります。

 

思うに予測のベースとなるモデルが分かっているかどうかが大きく影響しているのでしょう。気象メカニズムの研究はかなり進んでいて、また、モデルが修正されるペースも速いように聞いています。モデルが分かっている範囲であれば、計測精度をひたすら上げれば的中率は高まりますし、これまで片手落ちだった海中部分の温度などの取り込みが進めば、特に短期間の予報精度は更なる向上が見込めます。

 

一方、経済については、まだまだどのようなモデルが当てはまるのかすら分かっていません。経済統計の整備はだいぶ進んできてはいますが、人口動態といった社会統計との接続や、会計や法律といった制度やあるいは慣習の変化、まさに景気の「気」にあたるマインドの部分などを経済モデルにどのように反映させていくのか等々、課題は山積みです。また、仮に不況が予測できたとして、その不況を回避するための政策が採られたなら、その結果、不況は訪れない、というパラドックスを抱えています。逆に、もし、中央銀行が特定の銀行の経営状態が悪いと予測し、その銀行を名指しして経営改善を要求するなら、その銀行は取り付け騒ぎが発生して潰れる確率が上がると思います。

 

結局のところ、何が分かっていて何が分かっていないのか。予測の根本はここにかかっています。まともな学者ほど知的に誠実であろうとするので、どっちつかずの意見が多くなります。かつて、トルーマン大統領は顧問の経済学者への不満から、「片腕の経済学者を連れてきて欲しい」、と愚痴を言ったそうです。経済学者に尋ねても、必ずと言っていいほど、一方で(on the one hand)と他方で(on the other hand)がセットなので辟易したのでしょう。

 

最近の日本の学者・エコノミストをみると、どうやら片腕じゃないと政治家と仲良くなれないのではないか、とすら思います。耳心地の良い意見をいうのが学者の本分ではないはずで、では何のために仕事をして、その意見がどのように政策に反映されるのか。つくづく経済予測は難しいです。

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コメント: 2
  • #1

    深尾正 (金曜日, 11 5月 2018 10:13)

    昔は私が不勉強なので予測が当たらないと思っていましたが、勉強すればするほどに経済予測が難しいことを痛感しています。

  • #2

    鈴木卓実 (金曜日, 11 5月 2018 17:23)

    深尾さん、コメントありがとうございます。私のゼミのお師匠は、当たることよりも当てにいく過程での発見こそ重要というスタンスでした。
    もし、予測を外すパターンがあれば、データなりモデルなり思考なりに何らかのバイアスがあるのかもしれません(例えば、証券会社は強気に外しがちかと…)。経済予測は奥深いです。