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銀行ってシェアリングエコノミー?

民泊などの持ち主が使っていない間、他の人が使用できるというシェアリングエコノミーが定着しつつあります。初めて、シェアリングエコノミーと聞いたとき、ピンと来なかったというか、「何で当たり前のことを騒いでいるのか理解できない」という感覚でした。目新しさを感じませんでした。

 

もしかすると、銀行に勤めている方は同じような感覚にとらわれたかもしれません。金融とは、お金を融通すること。今のところ使っていないお金を他の人に使ってもらい、その使用料として利子を受け取るというのが金融の基本的なビジネスモデルですし、銀行はその取りまとめ役として、使っていないお金を預金として受け入れて、お金を使いたい人に貸し出しています。銀行はそもそもがシェアリングエコノミーと言えるのかもしれません。

 

「今のところ」というのがひとつのポイントで、使う予定がない期間が長ければ、その分、長く貸し出せます。借りる方からすれば、明日返すよりも1年後、1年後に返すよりも10年後に返す方が遣い勝手が良いので、使用料が多少高くなってもお金を借りる人が出て来ます。短期金利よりも長期金利の方が高いというのが自然な姿です。

 

銀行というと、堅実な経営をしているように見えますが、その実、ビジネスモデルの根本には脆さを抱えています。いわゆる取り付け騒ぎのような形で短期間に預金が流出すると、それに耐えられる銀行は存在しません。数値例で見てみましょう。

 

今、Aさんが現金100万円を銀行に預けたとします。銀行はこのうち一定割合を準備預金として日銀に預けますが、残りのお金については貸出に回すことができます。例えば、準備預金率を10%とすると、90万円を貸し出すことができます(実際の準備預金率はもっと低いです)。90万円を借りた人は今すぐにそのお金を現金として使わないのであれば、預金として銀行に預けることになります。その預金を元手に、銀行は別の人に90万円から準備預金率10%を除いた81万円を貸し出すことができます。こうしたサイクルが繰り返されると、最終的には100万円の現金が1,000万円の預金を生み出すことになり、これを経済学では信用創造と言います。

 

何だか、不思議というか不自然な感じがする方もいらっしゃるかもしれません。その不自然さがショックへの弱さに繋がります。銀行は預金の引き出しが殺到すれば、上記の例では最大1,000万円を支払わなければいけないのですが、現金は最初に預金として受け取った100万円しかありませんし、その100万円でさえ日銀に準備預金として預けていて、手元にはないかもしれません。銀行の金庫にはほとんど現金がなくても支払いに応じなければいけない預金は多額、というのが銀行のビジネスモデルの根本的な脆さです。

 

この点はいわゆるシェアリングエコノミーと違うところで、シェアリングエコノミーであれば希望者が複数いた場合、早いもの勝ちを原則にして、定員を超えればお断りすれば済むのですが、銀行預金の引き出しについては、早いもの勝ちではなく全員に対応しなければいけません。現金が足りないようであれば、日銀や他の銀行から借りてでも支払いに応じる必要があります。

 

言わば、シェアが行きつくところまで行きついたのが銀行なのかもしれません。このような脆さがあるため、銀行には厳しい規制がありますし、風評被害が発生しないよう健全な経営に努める必要があります。

 

経済家庭教師の準備や某銀行の不祥事もあり、ふとこんなことを考えていました。