· 

記念貨窃取に関する日本銀行の不可思議な対応

日本銀行職員による記念貨窃取の被害額は当初公表されていた155万円から375万円に拡大。15回以上、同様の手口で盗んでいたことが分かりました。事件の過程も今後の対応も、依然、疑問が残ります。

 

第一報が公表された際のブログ(日本銀行発券局員による記念貨窃取の背景)で、相互監視の不備や年度末の棚卸が行われていない可能性を指摘しました。今般の日本銀行のプレスリリースでは、その事実が明らかになりました。「 鑑査済みの貨幣収容袋について、定期的に一定量を抽出し、開封による内容(金種と枚数)の確認を行う扱いを新たに導入します。」とあるのですが、棚卸についての記載はなく、今後も棚卸が徹底されることはなさそうです。記念貨は同じ材料である金が額面よりも安く入手できるため、鑑査後の袋への収容に際し、別の事務取扱者が、秤量等により袋の内容 の数量確認を行う扱いを新たに導入します。」にある秤量、つまり重さを量って枚数があるとみなす方法では内容の確認は完全ではありません。偽造貨とすり替えれば、鞘が取れます。

 

公表されたプレスリリースでは、なお疑問が生じる部分があります。

 

窃取が行われた日は少なくても15日に及びます。15回も同じ手口で犯行が可能だったということは、窃取した職員以外の事務取扱者が少なくとも複数回、同じような形で相互監視を怠っていたことになります。今回、管理職のみが処分されていますが、事件の再発防止・綱紀粛正の観点から、相互監視機能を回復させるためにも、犯行に及んだ職員と共に作業し相互監視を怠った職員も処分すべきだったのではないでしょうか。

 

また、「被害が最初に判明した時点で既に独立行政法人造幣局に引き渡していた記念貨について調査した結果、判明した不足を含みます。」とあり、他の組織に引き渡す前に確認作業をしていなかったことも明らかになりました。再発防止策には、引き渡すタイミングでの内容確認は記載されておらず、なお犯行の余地はあるように感じます。

 

「処分を受けるに当たり、自ら反省の意を表すべく給与返上の申し出があり、これを受理しました。」、「自ら反省の意を表すべく俸給返上の申し出があり、これを受理しました。」にある返上額がいずれも返上10%、3か月となっていて、何らかの調整があったことが窺われます。どうやら「相場」が存在するようで、職位が低い者のペナルティが高くならないよう、おそらく理事か発券局長が申し出た返上額が天井になったと思われます。

 

プレスリリースのタイトルは、「記念貨に関する不祥事にかかる調査結果と対応について」です。犯行が確認できた以上、不祥事という言葉で濁さず、本文中にもある「窃取」の語を用いるべきだったように思います。

 

ただでさえ、発券局は人気のない現場部署。今後は人事考課のあり方を含め、日本銀行の根幹を支えている職員が正当に評価されるよう望みます。