十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない

SF作家、アーサー・C・クラークの言葉。調べてみると、英国のナイトの称号を授与されているので、サー・アーサー・チャールズ・クラークとなります。邦訳も多数されている有名な作家で、スタンリー・キューブリックの映画「2001年宇宙の旅」の脚本に携わり、小説版を執筆しています。

 

今年は日本の広い地域で猛暑が続いています。もはやクーラーがないと生活に支障をきたします。写真は朝一で撮った近所の猫ですが、朝から暑いため、警戒レベルが下がっています。せめてもの動物の本能で、何とか首だけはこちらを向いている有様です。

 

日本ですらこの状況なのに、年中暑いシンガポールの一人当たりGDPはもはや日本より上。今日のシンガポール発展の基礎を築いたリー・クァンユーによると、東南アジアにとって20世紀最大の発明で、シンガポールの発展に欠かせなかったものは「エアコン」だそうです。シンガポールは金融のほか、医療技術・医薬品研究のレベルの高さで知られています。暑さで冷静さを欠いたら、難しい数学どころか売買の値段すらも間違えそうですし、汗まみれの衛生環境でまともな医療ができるとは思えません。国家主導でテコ入れした教育を活かせる環境がクーラーで整った、ということでしょう。

 

因みに、クールビズで提唱されている28℃は、労働安全衛生法、つまり体調を崩さないことを企図した室温であって、労働生産性にとっての理想室温とは異なります。クールビズの28℃を提唱したのは、環境相時代の小池都知事です。東京を国際金融都市に!と息巻いていますが、外資系金融機関の東京オフィスはクールビズの28℃よりも低いような気がします…

 

それにしても、クーラーや冷蔵庫といった「冷やす機械」は不思議ですよね。電気を使えば熱くなるようなものなのに。

 

熱交換器で熱を交換すると言われても、同義反復で何の説明にもなっていません。物理現象として説明していないのであれば、熱交換器という名前の魔法のクリスタルで冷やしているのと変わりません。この辺りの説明については、大手電機メーカーのホームページでもざっくりとした説明しか載せていないところもあり、驚かされます。せめて、ガスの気化熱を利用している、と書いても良さそうなもので、それっぽいことを言って何も言ってないのは、理系出身者が大量に洗脳されたカルト宗教の構図と似ています。

 

こうした一見、説明しているようで、その実、説明になっていないものが世に溢れています。ビットコインなどの仮想通貨の説明もこの類で、それっぽい単語を並べただけの資料が多く、「複雑な計算を必要とするために大量の電力を消費し、ビットコインだけでヨーロッパで言えば、アイルランドやオーストリアと同じ量の電気を使っています。この電力消費量は、今年中にはイギリスに匹敵するとの推計もあります」と丁寧に記載している仮想通貨交換業者のサイトはほとんどないでしょう。そう言えば、仮想通貨もIT系の方ほど手を出しているような…

 

本来であれば、先ほど閉幕したG20で仮想通貨(G20は通貨と認めていないので、公的には暗号資産と呼ばれている)の問題点やマネーロンダリング対策などの規制がしっかりと議論される予定でしたが、トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争や為替レート発言など保護主義を巡る問題への対応協議と声明作成に時間が採られてしまいました。

 

科学技術にも魔法にも共通するシンプルなルールは、「何かを得るためには何かを代償にする必要がある」ということ。魔法という空想世界でも、錬金術は等価交換だし、マジックポイントだったり魔力を消費します。それを打ち破るのが賢者の石であり、科学になぞらえれば永久機関であって、手に入ることがないものです。

 

RPG風に喩えるなら、攻撃魔法にMPを割いたら回復魔法が使えなくなる。だったら、仮想通貨に電気を使うよりはエアコンに電気を使いませんか?