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サマータイム導入の論点整理と私見

2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(元首相)と武藤敏郎事務総長(元財務省事務次官・元日本銀行副総裁)の陳情を受ける形で、サマータイム導入を検討するよう安倍首相が指示したことにより、Twitterなどではサマータイムの議論が、ある意味でお祭り騒ぎとなっています。

 

私自身は、サマータイム反対の立場からブログ(サマータイムに反対する諸々の理由)などで意見の表明をしています。SNSでの投稿も落ち着き始めましたし、情報の出尽くし感も出て来ましたので、以下に論点を整理し、私見を述べました。

 

①サマータイムの心身への影響、節電効果、労働時間等への影響

太陽のリズムに合わせて生活するというのは理想ですが、学術的な見地からは、サマータイムは心身への負荷が強く、節電効果も見込めないようです。メリットと言われている他の多くの事柄も実証的には支持されていないようです。日本の労働環境を考慮すると、会社にいる時間が2時間純増とはならないにしても労働時間が長くなる可能性が憂慮されます。また、サマータイムを導入している国も1時間という変更がほとんどで、2時間ずらした場合の影響はより深刻になる可能性があります。

 

②サマータイムの効果に関わらず、システム対応の時間の少なさ・失敗した場合のコストへの懸念

報道をみると、来年からのサマータイム導入を検討しているようで、その場合、システム対応の時間が足りない点を多くのIT関係者が指摘しています。元号改正(2019年5月)、そして消費税率変更(2019年10月、軽減税率対応含む)が予定されていますし、人手不足対応ニーズからもIT技術者の需給はひっ迫し、長時間労働が常態化しています。サマータイム導入のシステム対応は国内では前例のない作業のため、作業範囲が未知数ですし、失敗したときのコストも想定しがたいものがあります。また、ユーザー側でもユーザー端末で時刻を入力することが多く、この時刻が日本標準時(JST)なのか日本夏時間(JDT)なのか、周知徹底する必要もあり、マニュアル整備やユーザー教育を進めなければ、ヒューマンエラーを起こす可能性が高いと思われます。

 

③そもろも論

なんでオリンピック・パラリンピックの酷暑対策のために時間変更をしなければならないんだ、夏時間に変更せずに競技時間だけ変更すれば良いのでは、東京のイベントに全国を巻き込むな、たかが商業イベントのために時間を変えるななど、様々な意見があるようです。私自身としては、そもそも論として、日本が夏時間を導入したとしても、IOC(国際オリンピック委員会)は欧米のテレビ放送時間に関心があり(IOCの大口資金提供者ですから…)、夏時間を導入してもIOCが承認しない可能性がある点を指摘したいと思います。この点は特に重要で、サマータイム導入の議論はオリンピック・パラリンピックの酷暑対策に端を発しているのですが、IOCの承認可否を指摘している論者が少ないのが気がかりです。IOCとしては、GMT(グリニッジ標準時・国際標準時)+9時間が日本時間と認識している訳で、日本が勝手にサマータイム導入で盛り上がった挙句、壮大にIOCにハシゴを外される可能性があります。交渉実務を担当している電通は、IOCとの交渉状況を公表すべきでしょう。オリンピック権益の独占で恩恵を得ている以上、道義的責任として知らぬふりをすべきではないと思います(道義的責任という単語が電通にあるかは別ですが…)

 

開催時期については、候補地選定の段階で、欧米のメジャースポーツ(サッカーやアメフトなど)の放送時期と重ならないよう・視聴率の喰い合いがないよう、真夏の開催が条件になっています。私自身はオリンピックの東京開催に反対ですし、中止もやむを得ずと思っているのですが、開催するのであれば、競技時間の再交渉や東北・北海道での競技を増やすなどの対策の方が、サマータイム導入よりは合理的だと考えています。

 

私自身は上記①、②、③の全ての論点を踏まえ、サマータイム導入には反対です。IT技術者のスキルや電通の交渉力・資金力で②、③がクリアされても、睡眠健康指導士そしてエコノミストの立場から①への懸念は払拭されません。

 

もちろん、私自身が間違っている可能性もありますが、サマータイム導入の可否については、科学的な・証拠に基づいた議論を経ての決定を願います。