統計の整備は、日本再建の基礎事業中の基礎事業である

吉田茂首相に乞われて、統計委員会の初代委員長に就任し、戦後統計の整備や統計法の制定に尽力した大内兵衛(おおうちひょうえ)の言葉、「統計の整備は、日本再建の基礎事業中の基礎事業である」。

 

経済に関する議論・記事の多くで、どうも統計の数字が独り歩きしているように思えてなりません。多くの場合、定義や作成方法を無視して、公表された結果の数字だけに飛びつくことが原因のようです。例えば、消費者物価指数はミクロ経済学の効用理論を背景にしているため、家計が実際に支払う生計費とは別物ですし、そもそも誤差はつきものですが、一部の専門家を除き、この点は重要視されていないように感じます。消費者物価指数が2%上昇することの意味について、生計費の視点から論じている方は多くありません。

 

また、経済の構造変化に統計の整備が追い付いていない面も見受けられます。家計や働き方の多様化、Eコマースやシェアエコノミーの進展、外国人観光客の増加等の経済の変化に応じた対応には、相応の資源を統計整備に充てる必要がありますが、人員の質・量の面でも予算の面でも不足しています。

 

公的統計は極めて専門的な分野で、国連やIMF、ILO等の国際機関が定めるマニュアルに準拠する必要がある統計も多いのですが、英語という言語の壁だけではなく、経済学や数学、統計学の知識も要求されます。現在の国家公務員の人事制度の下では、統計のプロは育ちにくい環境にあります。また、「足で稼ぐ」必要のある統計調査員の絶対数も不足しています。

 

10年ほど前に60年を経て統計法が改正され、今年も部分的に改正がありました。経済成長率が高ければ、多少の誤差にも目を潰れますが(かつての日本や現在の中国やインドのようなイメージです)、低成長やゼロ近傍の成長となると、誤差の影響で、成長率がプラスにもマイナスにもなりかねないという問題もあります。

 

経済構造の変化だけではなく、個人も企業も情報の保護・管理についての意識が高くなり、調査する側としては、「調査環境の悪化」と言わざるを得ない状況にもあります。

 

戦後の再建だけではなく、現在の日本経済の再建にも、意思決定の基礎となる統計は極めて重要です。私自身、ささやかではありますが、外部寄稿で統計に関する情報発信をしているところです。

 

明治初期、戦後と変革期には統計の整備が行われました。現在の変革期、統計の整備がどのように進展するのか、注目しています。